【WG2022日本代表】クラウドファンディング始動! リターンでもらえる「投票券」とは?

フライングディスク競技アルティメットの大会として最高峰の舞台であるワールドゲームズ。

2022年3月25日、そんなワールドゲームズでの上位入りを目指す日本代表チームがクラウドファンディングを行うことを発表しました。しかし、アルティメットに関わる皆様にとって「ワールドゲームズ」や「クラウドファンディング」はあまり身近ではないかもしれません。

 

■日本代表チームによるクラウドファンディングページはこちら↓↓
「悲願の世界一を目指すアルティメット日本代表「疾風JAPAN」に熱いパワーを!!!」

 

今年日本代表チームが挑む今回の「ワールドゲームズ」は今後の日本アルティメット界にとってどのような意味があるのか、また今回発表された「クラウドファンディング」とは一体なんなのか、さらにはクラウドファンディングのリターンとなっている「投票券」とは一体なんなのか。今回、日本代表本部長である和田貢一さんにお話を聞かせていただきました。

JFDA日本代表本部長 和田貢一さん

JFDA日本代表本部長の和田貢一さん。Zoomで取材に応じてくださった。

なぜ今、「クラウドファンディング」なのか

3月25日に発表されたワールドゲームズ日本代表チームによるクラウドファンディング。そもそも「クラウドファンディング」とは、何かやりたいことがある人や団体が目標金額を設定し、支援を一般の人や団体に募り、支援に対してモノやサービスに対するお返し(リターン、返礼品)をする代わりに支援金をもらい、やりたいことの実現にそのお金を使うことや、その仕組みのことを言います

今回、日本代表チームが行うクラウドファンディングの目標金額は250万円。私たちは3,000円〜100,000円に設定された支援金額を選び、代表チームの支援をすることができ、集まったお金は日本代表選手の活動費として選手に分配されるほか、今回の代表チームと次世代の代表を支える若手選手の強化費用に充てられます。

和田さんは今回代表チームとしてクラウドファンディング実施に踏み切った経緯を次のように教えてくださいました。

「今回の日本代表チームがクラウドファンディングを実施することに決めた一つの大きな背景として、新型コロナウイルス感染症の拡大が挙げられます。社会的にも苦しい状況の中、特に昨年は強化合宿や選考会を行うことも容易ではなかったです。緊急事態宣言下では選手を集めることを避けましたが、それでも強化の手を止めてはいけないと考え、代表チームスタッフと候補選手たちによるオンラインでのミーティングを実施したりもしました。また、感染状況が落ち着いていた時期には合宿を実施しましたが、参加選手には自己負担でのPCR検査を必須とし、大人数での相部屋となることを避けるため、宿泊費用が通常よりも高くなりました。選手たちはこれまで以上に経済的な負担をお願いする状況になってしまいました。本来なら協会がこういった費用を負担できればいいのですが、ご存知の通り協会もコロナの影響で資金状況に余裕があるわけではありません。こうした状況から、日本代表本部や代表選手たちで議論を重ね、皆さんに少しでも応援していただけないかと考え、クラウドファンディングを実施しようと決断しました。」

 

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「悲願の世界一を目指すアルティメット日本代表「疾風JAPAN」に熱いパワーを!!!」

 

「ネクストジェネレーション投票券」とは

しかし、国際大会の参加にあたって選手が負担を強いられてきたのはこれまでの日本代表も同様。さらに、コロナウイルス感染拡大によって負担を強いられているのは、日本代表チームだけではないでしょう。また、これまでもアルティメット界では、日本フライングディスク協会や日本代表チームの他、クラブチームなどがクラウドファンディングに取り組んできたことがあります。では、今回の日本代表チームが支援をしてもらうための工夫やこれまでのアルティメット界でのクラウドファンディングとの違いはどんなところにあるのでしょうか。

ここで出てくるのが「投票券」です。

今回のクラウドファンディングで特にユニークなのが「ネクストジェネレーション投票券」と「観戦チケット」。これまでのアルティメットチームのクラウドファンディングのリターンといえば、記念ディスクやウェア、横断幕への名前入れなどが一般的でした(今回のクラウドファンディングでも同様に「横断幕への名前掲載」や「オリジナルマスク」といったリターンも用意されています)。

しかし、今回画期的なのが、未来の日本のアルティメット界を背負って立つであろうU25世代の「ネクストジェネレーション」チームを選出し、5月にネクストジェネレーションvsワールドゲームズ日本代表の強化試合を行うということ。いわば現時点でのU25日本代表とも言えるネクストジェネレーションは、男子10名女子10名で構成される予定で、その選出は日本フライングディスク協会日本代表本部の推薦が中心となります。ここで重要な役割の一つを担うのが「投票券」。今回のクラウドファンディングのリターンとして投票券を得た人は、ネクストジェネレーションに参加させたい25歳以下の選手に投票することができます。そして、多くの票が集まった選手は、皆さんの期待の選手として、ワールドゲームズ日本代表との強化試合に参加することになるのです。

いわば、プロ野球のオールスターファン投票、AKB48のセンターを決める選抜総選挙。アルティメットファンの皆さんの1票が若きアルティメットプレイヤーのチャンスを生み出すことになるといえます。

日本代表本部長の和田さんは、今回の強化試合を企画した背景を教えてくださいました。「過去の大会でも今回の大会でも、ワールドゲームズを目指す日本代表が本大会で上位を目指す上での一つの課題として、チームの強化を図るための試合相手がなかなか見つからないことが挙げられてきました。そのため、前回大会時には、本大会前にオーストラリアチームとの親善試合を行い強化を図りましたが、今大会はコロナウイルス感染症拡大の影響もあり、他国チームとの強化試合は叶いませんでした。そんな中、今回知恵を絞って考えたのが、25歳以下の国内の有望な選手たちでチームを作り、ワールドゲームズチームとの強化試合を組むことでした。」

 

2020年以降、アンダー世代の世界大会は軒並み中止。危ぶまれる次世代育成

加えて和田さんは、ワールドゲームズチームの相手を”25歳以下”の選手とした意義についても教えてくださいました。「日本代表本部として長期的な競技力強化に取り組む上で一つ大きな目標になっているのが、2028年アメリカ・ロサンゼルス、2032年オーストラリア・ブリスベンで開催予定となっているオリンピックにフライングディスク・アルティメットが正式競技入りした際の日本代表のメダル獲得です。この目標を見据えた時に、今の25歳以下の選手たちはオリンピックでまさに選手としての旬を迎えているはずです。しかし、この世代の選手たちは昨年や今年のU24やU20の世界大会が中止となってしまい、大学選手権なども満足に開催されることはありませんでした。そんな世代に少しでもトップレベルと接する場を用意したいと思いましたし、若い世代への機会提供と現在の日本代表チームの強化を両立できるのが今回の企画だと思っています。」

実際、今回取材をさせていただいた私仙田自身も、自身がまだ大学2年生だった頃にアンダー世代の代表チームの選考に参加し、同世代の選手と切磋琢磨することができ、自分の現状のレベルや立ち位置を把握することができました。さらには運良く当時のU23日本代表に選出していただき、U23日本代表チームは国内トップ社会人チームとの練習試合の機会をいただいたり、世界大会で同世代のトップレベルの選手と試合をして、プレイヤーとしての視野が広がり、成長できたと実感しています。今の若い世代の選手たちはコロナの影響で世界大会や地区選抜といった機会が減ってしまっていますが、少しでも今回の企画がチャンスになるのではないかと和田さんの話を伺って感じました。

加えて、同じくリターンとして設定されている「観戦チケット」は5月の強化試合を観戦することができるチケットです。現時点では新型コロナウイルスの感染拡大状況によって現地で直接観戦できるのか、あるいはWEB配信での観戦となってしまうのかは未定ですが、ワールドゲームズに臨む直前の日本代表チームの試合を観られる貴重な機会である上、これまでなかなか行われてこなかった若手日本代表と現役A代表との試合を観られる貴重な機会でもあります。

日本代表を応援したい、そして未来の日本代表を応援したいという方は、クラウドファンディングで現役代表チームを支援し、リターンを使ってあなたがよく知る母校の期待の後輩や、自分の地域の期待の選手、一緒にプレーする日本代表を目指す仲間などに投票することで、未来の日本代表強化に貢献することができるということです。

 

10万円の大口支援のリターン「代表選手とのオンライン交流」

さらにもう一つ注目なのが、10万円の支援に対するリターンについてくる「代表選手とのオンライン交流」。クラウドファンディングは、個人での支援も可能ですが、団体や複数人での支援も可能です。和田さんはこの10万円の支援のイメージについても教えてくださいました。「10万円という大きなお金をご支援いただくというのは決して簡単なことではないと思っています。ただ、例えば大学チームのOBOG会がこの支援をしていただき、リターンの観戦チケット10枚や代表選手とのオンライン交流を現役の大学チームの選手たちにプレゼントするというのもありです。さらには、例えば地域のスポーツ団体の方々がご支援いただければ、アルティメットを習っている子供たちに観戦チケットを使ってもらったり、子供たちと代表選手の交流を行うことも可能です。今回のクラウドファンディングでは、ネクストジェネレーションの試合を企画したことにも表れているように、今回の大会だけで終わってしまうようなものではなく、そのさらに先のオリンピックでのメダル獲得やさらなるアルティメット界の発展につなげたいという想いがあります。」

2022WG日本代表候補

2022WG日本代表候補メンバー。彼らの中から選出される今大会のメンバーとのオンライン交流が今回のクラウドファンディングのリターンの目玉の一つだ。

 

“DISC”のコンセプト

最後に和田さんは、昨年日本代表本部を中心に新たに策定した”DISC”というコンセプトを教えてくださいました。

「日本代表チームは大会で勝つことももちろん重要です。ただ、勝つためにもそうですし、さらにその手前、チームを応援してもらったり、支えてもらったり、代表チームの活動を継続したりするために必要なことがたくさんあると思っています。そういった想いを、我々が日々扱っている”DISC”という言葉に絡めてまとめてみました。」

◇ドリーム
自分の夢、チームの夢、日本のアルティメット界の夢、アルティメットを通して応援してくれる人に夢を。

◇ダイバーシティ
年齢、性別、出身地、所属チーム、経験など様々な事を受け入れて多様な人材を集めてチームを作る。

◇インフィニティ
選手、チームに限界を作らない。可能性は無限大。

◇イノベーティブ
新しい事にチャレンジして常識を覆す考えを持って挑む。誰も考えないような事などを考えるチームであれば世界を驚かす事も可能。

◇スピリット
SOTG.アルティメットを行ううえで大事な心構え。

◇サステナビリティ
継続的に日本の発展を考えて、次世代につなげる。
また、アルティメット日本代表を通してSDGsを考え社会貢献を行い応援してもらえるチームにする。

◇クリエーティビティー
ゲームでクリエーティブな発想やプレーをイメージして柔軟な考え型を常に持つ。

◇コンフィデンス
試合で一番大事なメンタル。自分、チームに自信と信頼を持ち挑む。また自信を持つ為の準備をする。

 

和田さんはこう続けます。「正直、まだまだこのコンセプトは策定したばかりですし、選手たちやアルティメットに関わる皆様にとってあまり馴染みのない言葉なども含まれていますし、選手一人一人が意識して取り組めているかというとまだまだだと思います。ただ、これらは昨今流行りの言葉だから掲げているというわけではなく、例えば多様性や持続可能性を示すダイバーシティやサステナビリティは今までもすごく大事な概念だったと思いますし、これからより一層重要になると心から考えています。また、今まで代表チームでよく言われていた気持ちや夢を表すコンフィデンスやドリームといった言葉も、改めてこうしてまとめることでより一層強く意識できるのかなと考えています。今はまだコンセプトになったばかりで浸透はしていませんが、代表選手たちを中心に、選手以外の関係者や応援してくださる皆さんとも共有して体現できるものにしていきたいですね。」

 

社会的にコロナウイルス感染症の感染拡大で苦境に立たされる中、代表チームも選手も苦しい中でさまざまな面で工夫と我慢をしながら高みを目指しています。苦しい状況にあるのは皆同じかもしれませんが、このような状況の中でも自己研鑽に励み、高みを目指す代表チームや、若く才能あふれる選手たちを支援する術があるのは貴重なことだと感じました。一人一人の支援額は決して大きなものではないかもしれませんが、日本のアルティメット界、フライングディスク界に関わる皆様からのご支援が、クラウドファンディングの目標達成とその先にある代表チームのメダル獲得や持続可能な育成・競技力向上につながることを願っています。

 

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