SOTG Report Vol.3「アルティメットクラブチャンピオンズリーグ2019」
「SOTG Report」をお届けします。SOTGレポートが公開されるようになった経緯などは以前の記事にまとめているので、そちらをご覧ください。
2019年第3号となる今回は、アルティメットクラブチャンピオンズリーグ2019のSOTG面での振り返りを行います。
今大会での新たな取り組み
今大会では、ゲームアドバイザーは配置できませんでしたが、第30回大学選手権本戦・決勝戦に引き続き、スピリットディレクターを配置しました(筆者もアシスタントとして活動しました。)。スピリットディレクターは、スピリットキャプテンミーティングの実施やSOTGスコアの収集、システムへの入力、コメントへの対応を通じて、大会期間中に行われるすべての試合のSOTGの状況を把握、管理し、円滑な大会運営を支援するスタッフです。
詳しくは以下のSOTG委員会通知をご覧ください。
本協会主催大会への「スピリットディレクター」の配置及びスピリットキャプテンミーティングの実施について(SOTG委員会通知 2019-04号)
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2019/09/c77fe19292151f58300f974d5c3df8a5-1.pdf
また、今大会では、選手からのSOTGに関する質問や相談に直接対応するため、本部テント内に「SOTGブース」を設置しました。スコア提出のついでに多くの選手に立ち寄っていただき、選手、スピリットディレクターの両者にとって実りある機会になったのではないでしょうか。今後も折を見て、不定期ではありますがSOTGブースの設置を検討していきたいと思います。
実際にどのような相談を頂いたのか、以下にその一部を紹介します。
- 「スピリットサークルではどのような話をすれば良いのか。」
SOTG委員会が公表している資料「スピリットキャプテンの役割」には、以下のように記してあります。理想的には、スピリットに関する問題への対処、試合状況に関する議論、良い試合について相手チームに賛辞を述べる場として活用される。意見に耳を傾け、正直に、偏見を持たず、暴言は避ける。学びを与え合うチャンスとする。
スピリットサークルの直後は、キャプテンやスピリットキャプテンが対面し、試合の印象について意見交換し、うまくいったことや今後改善の余地があることをお互いにアドバイスし合うと良い。
スピリットキャプテンの役割 (原題:Spirit Captain Role)
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2019/09/e5609e7f09e2fb9803727ad40482d4e6.pdf
- 「ルールに基づいてファールをコールしたが、コール後の話し合いの中で相手と上手くコミュニケーションが取れないまま時間が経ち、プレイを戻すことになってしまった。どうすれば上手く話し合いができるのか。」
はじめに、何が起きたのか、何が起きた可能性が高いかをお互いに確認しましょう。それを踏まえて、お互いのコール(ファール/コンテスト)根拠を簡潔に説明します。コンテストによる話し合いの時間は45秒しかありませんので、順序立てて話し合うことが解決のポイントだと考えます。
- 「相手チームからSOTGスコア「1」を付けられたが、その根拠が納得できない場合はどうすれば良いか。」
スコアの根拠について相手チームのスピリットキャプテンに尋ねると良いでしょう。両チームの合意が得られれば、スコアを修正することもできます。
SOTGに関する優れた取組み
今回の大会で見られたSOTGに関する優れた取組みを以下のとおり整理しました。
<優れた取組み>
- チーム独自の取組みが多く見られた。
試合前後のコミュニケーションや試合中のコート外でのコミュニケーション、その試合のMVPの選出など、各チームが独自に考えた取組みが多く見られました。
SOTG向上に向けた取組みに正解はなく、チームや個人がSOTGの向上について必要だと考える取組みが正解の1つになります。このような動きが他の大会へも広がっていくことが期待されます。
- SOTGスコアの付け方が浸透していた。
前々回号(SOTG Report Vol.1「文部科学大臣杯第44回全日本アルティメット選手権大会」)では、SOTGスコアの付け方が浸透していない点を改善点として挙げていましたが、今回の大会では基準点の考え方など、比較的スコアの付け方が浸透していたように見受けられました。
また、世界的には1つの大会を通じたSOTGスコアが近年上昇傾向にあります。例えば、今年の夏にドイツ・ハイデルベルクで行われた「WFDF2019世界U-24アルティメット選手権大会」の全部門平均スコアは10.65でした。
今回の大会の全部門平均スコアも10.53と、基準となる10点を大きく上回る結果になりました。国内大会でも世界大会と同様の傾向が見られることは興味深いです。
まとめ
今回の大会も、第30回全日本大学アルティメット選手権に引き続きスピリットディレクターを配置し、スピリットキャプテンミーティングの実施やSOTGブースの設置を行うなど、新たな試みの多い大会となりました。選手、大会運営スタッフの皆様には、この試みについてご理解とご協力をいただき、特に選手の皆様には臨機応変に対応していただき大変感謝しています。また、選手発意の優れた取組みも多く見られ、それらが他の国内大会へも波及していくことが期待されます。今後とも、ゲームアドバイザーをはじめ、SOTG委員会の活動にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
Flying Disc Times ライター
JFDA上級公認ゲームアドバイザー|WFDF国際ゲームアドバイザー日本人第1号|明治大学FREE FLYERS出身|CREWS所属|フライングディスク競技の核である「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」と、その考えに沿って選手が「セルフジャッジ」を高い水準で実現するための方法について、日々研究と実践を繰り返しています。エビデンスに基づいた記事の執筆を心掛けます。