SOTG Report Vol.2「第30回全日本大学アルティメット選手権大会」
「SOTG Report」をお届けします。SOTGレポートが公開されるようになった経緯などは前回号にまとめているので、そちらをご覧ください。
SOTG Report Vol.1 「文部科学大臣杯第44回全日本アルティメット選手権大会」
2019年第2号となる今回は、第30回全日本大学アルティメット選手権大会のSOTG面での振り返りを行います。
今大会でのゲームアドバイザー活動
今大会でのゲームアドバイザー活動を整理すると、以下のようになります。
今大会での新たな取組み
9月21日~22日に行われた本戦と9月28日に行われた決勝戦では、近年の世界大会の運営状況などを踏まえ、「スピリットディレクター」を配置しました。スピリットディレクターは、スピリットキャプテンミーティングの実施やSOTGスコアの収集、システムへの入力、コメントへの対応を通じて、大会期間中に行われるすべての試合のSOTGの状況を把握、管理し、円滑な大会運営を支援するスタッフです。
詳しくは以下のSOTG委員会通知をご覧ください。
本協会主催大会への「スピリットディレクター」の配置及びスピリットキャプテンミーティングの実施について(SOTG委員会通知 2019-04号)
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2019/09/c77fe19292151f58300f974d5c3df8a5-1.pdf
SOTGに関する優れた取組みと改善点
今回の大会で見られたSOTGに関する優れた取組みと改善点を以下のとおり整理しました。
<優れた取組み>
- 多くのチームがスピリット・キャプテンを配置していた。今回の大会(本戦)では、スピリットディレクターを配置するのに合わせてスピリットキャプテンミーティングを行いました。そのため、各チームから1名以上スピリットキャプテンミーティングへ参加するよう依頼しました。そのこともあり、多くのチームでスピリットキャプテンを配置しているという現状を知ることができました。
JFDAは、今年度実施する大会ではスピリットキャプテンの配置を義務付ける予定はないとしていますが、各チームが自主的にスピリットキャプテンを配置することは非常に意義があると考えられます。
また、JFDAではWFDFが公表しているスピリットキャプテンの役割を整理した資料「Spirit Captain Role」を日本語に訳した「スピリットキャプテンの役割」という資料を作成、公表しています。すでにスピリットキャプテンを配置しているチームや配置を検討しているチームの方はぜひご覧ください。
スピリット・キャプテンの役割 (原題:Spirit Captain Role)
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2019/09/e5609e7f09e2fb9803727ad40482d4e6.pdf
- SOTGスコアの付け方が浸透していた。前回号(SOTG Report「文部科学大臣杯第44回全日本アルティメット選手権大会」)では、SOTGスコアの付け方が浸透していない点を改善点として挙げていましたが、今回の大会では基準点の考え方など、比較的スコアの付け方が浸透していたように見受けられました。
その一方で、地区予選ではSOTGスコアの付け方が浸透していないと思われる事案も確認していますので、次年度以降は予選においてもルールの浸透を目指していく必要があると考えています。
<改善点>
- ディフェンシブ・レシービング・ファールが見受けられた。
ディスクに対するプレイの前や最中、直後に、ディフェンス側の選手がレシーバーに対して身体接触につながる動き(イニシエイト・コンタクト)をした場合、ディフェンス側の選手によるファールと見なされます。(17.2.)したがって、ディフェンス側の選手は、身体接触を伴うようなブロックは避けなければなりません。
つまり、ディフェンス側がディスクを触る前、最中、直後、において身体接触を伴うブロックをしてしまった場合は「ファール」となります。このとき、不正なポジションをとっていないレシーバーに対して身体接触を伴いながらブロックをした場合、レシーバーより先にディスクを触ったか否かは関係ありません。
ちなみに、「イニシエイト・コンタクト」は、公式ルール定義集において以下のように定義されています。
- チェック時のプレイの再開方法に関する誤った認識が見受けられた。
チェックによってプレイを再開する際の方法について、公式ルールには以下の3つのパターンが示されていますが、マーカーが至近距離にいる状態でスローワーがディスクを地面に当ててプレイを再開しているケースなど、誤った方法でチェックからプレイを再開している場面が多く見受けられました。
10.5.1. スローワーがディスクを所有している場合:
10.5.1.1. ディフェンス側の選手が手の届く範囲にいる場合、その選手はディスクに触れなければならない。
10.5.1.2. ディフェンス側の選手が手の届く範囲にいない場合、スローワーはディスクを地面に当て、「ディスク・イン」とコールをしなければならならない。10.5.2. ディスクが地面にある場合、最もディスクに近いディフェンス側の選手が「ディスク・イン」とコールをしなければならない。
まとめ
今回の大会は、スピリットディレクターを配置し、スピリットキャプテンミーティングも行うなど、新たな試みの多い大会となりました。選手、大会運営スタッフの皆様には、この試みについてご理解とご協力をいただき、特に選手の皆様には臨機応変に対応していただき大変感謝しています。今回の大会でから学んだことを受けて、次回以降の改善に結び付けていきたいと考えています。
また、公式ルールを誤って適用している場面は依然として多く見受けられます。公式ルールに加え、このレポートも参考にしてみてください。公式ルールを読むだけでは想像しづらいシチュエーションが多いという声も伺っておりますので、解釈が不明なルールがあれば折に触れてゲームアドバイザーにお問い合わせいただければと思います。
今後とも、ゲームアドバイザーの活動にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
Flying Disc Times ライター
JFDA上級公認ゲームアドバイザー|WFDF国際ゲームアドバイザー日本人第1号|明治大学FREE FLYERS出身|CREWS所属|フライングディスク競技の核である「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」と、その考えに沿って選手が「セルフジャッジ」を高い水準で実現するための方法について、日々研究と実践を繰り返しています。エビデンスに基づいた記事の執筆を心掛けます。