SOTG Report Vol.1「文部科学大臣杯第44回全日本アルティメット選手権大会」
みなさんは「SOTG Report」なる読み物がJFDAのホームページ上に公開されていることをご存知でしょうか。知っているという方も知らないという方も、一度以下のリンクからアクセスしてご覧になってみてください。
SOTG Report Vol.1 -2018summer-
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2018/05/SOTG-Report-Vol.1-2018-summer-.pdf
SOTG Report Vol.2 -2018winter-
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2018/12/SOTG-Report-Vol.2-2018-winter-.pdf
SOTG Reportは、スピリット・オブ・ザ・ゲーム(SOTG)の基本的な考え方の普及に向けて、ゲームアドバイザーが直近の大会のSOTG面での振り返りやゲームアドバイザーの海外派遣報告などを行うため、昨年の夏と冬にJFDAホームページ上に公開してきました。
今年も昨年と同様に夏と冬に記事を公開する予定でしたが、年2回の公開では個々の大会の振り返りの即時性が失われる(例:9月の大学選手権の振り返りが12月の冬号に掲載されてしまうなど)こと、フライングディスク競技全般を取り扱う新たな情報発信媒体としてFDTが誕生したことなどを受け、今回以降のSOTG Reportは、主要な大会の終了後を目処にFDT上で公開することとしました。
2019年第1号となる今回は、文部科学大臣杯第44回全日本アルティメット選手権大会のSOTG面での振り返りを行います。
今大会でのゲームアドバイザー活動
今大会でのゲームアドバイザー活動を整理すると、以下のようになります。
今大会でゲームアドバイザーが行った新たな取組み
6月22日~23日に行われた本戦では、昨年の活動の反省やミーティング内容を踏まえ、以下のような取り組みを新たに行いました。
- SOTGスコアの最新事例集及びスコアリングの際の注意点をまとめた資料を全チームに配布
以前の国内大会で配布していたSOTGスコアの事例集がWFDFによって更新されていました。そこで、最新版を日本語に訳し、資料化したうえで大会当日配布しました。
- 初日朝のキャプテンミーティング時にゲームアドバイザーからSOTGスコアについて説明
これまで、ゲームアドバイザーはキャプテンミーティングに参加していませんでしたが、スピリット・キャプテンを配置するチームが増えてきたことなどを受け、SOTGに関する必要情報の伝達の機会として、ゲームアドバイザーもキャプテンミーティングに参加しました。
SOTGに関する優れた取組みと改善点
今回の大会で見られたSOTGに関する優れた取組みと改善点を以下のとおり整理しました。
<優れた取組み>
- 多くのチームがスピリット・キャプテンを配置していた。
公式ルール付帯資料では、「チームは、試合ごとに、キャプテンとスピリット・キャプテンを一人ずつ決めなくてはならない」とされています。(B1.5)付帯資料に示されている規則は大会ごとに適用するか否かを主催者が判断しても良いこととなっているため、国内大会ではスピリット・キャプテンの配置に関する規則を適用していません。 ⇒しかしながら、WFDF主催の国際大会ではスピリット・キャプテンの配置が義務付けられていることから、チームが自主的にスピリット・キャプテンを配置することは非常に意義があると考えられます。
- 試合前やハーフタイム中に、スピリット・キャプテン同士で積極的に話し合う場面が多く見られた。
スピリット・キャプテンの役割が十分に浸透していない中でも、各チームのスピリット・キャプテンは精力的に活動しており、試合の円滑な進行に貢献していました。
スピリット・キャプテンの役割が十分に浸透していないことはゲームアドバイザーチームの中でも課題として認識していたため、JFDAに働きかけ、WFDFが公表しているスピリット・キャプテンの役割を整理した資料「Spirit Captain Role」を日本語に訳した「スピリット・キャプテンの役割」という資料を作成、公表しました。すでにスピリット・キャプテンを配置しているチームや配置を検討しているチームの方はぜひご覧ください。
スピリット・キャプテンの役割 (原題:Spirit Captain Role)
https://www.jfda.or.jp/web/wp/wp-content/uploads/2019/08/a4e9a4ded4fcae9a22541506fbff5fac.pdf
<改善点>
- SOTGスコアのつけ方(2点が基準となる、0点や4点をつけた場合にはその理由をコメント欄に記入する、など)が浸透していなかった。
主に地区予選において、結成から間もないチームにそのような傾向が見られました。ゲームアドバイザーも引き続き情報発信に努めたいと考えています。
- ディフェンシブ・レシービング・ファールが見受けられた。
ディスクに対するプレイの前や最中、直後に、ディフェンス側の選手がレシーバーに対して身体接触につながる動き(イニシエイト・コンタクト)をした場合、ディフェンス側の選手によるファールと見なされます。(17.2.)したがって、ディフェンス側の選手は、身体接触を伴うようなブロックは避けなければなりません。
つまり、ディフェンス側がディスクを触る前、最中、直後、において身体接触を伴うブロックをしてしまった場合は「ファール」となります。このとき、不正なポジションをとっていないレシーバーに対して身体接触を伴いながらブロックをした場合、レシーバーより先にディスクを触ったか否かは関係ありません。
ちなみに、「イニシエイト・コンタクト」は、公式ルール定義集において以下のように定義されています。
- 「イクイップメント」をコールできる条件に関する誤った認識が見受けられた。
⇒「イクイップメント」は、用具の不備などを正すために「プレイの中断を延長」する場合にコールすることができます。(10.3)したがって、プレイが中断(「ファール」や「バイオレーション」のコール後など)していない場合には「イクイップメント」をコールすることはできません。
今回の大会ではターンオーバー直後に「イクイップメント」がコールされている事例が多く見受けられましたが、攻守交代の間はプレイが止まっていないので、「イクイップメント」をコールすることは相応しくありません。
- チェック時のプレイの再開方法に関する誤った認識が見受けられた。
チェックによってプレイを再開する際の方法について、公式ルールには以下の3つのパターンが示されていますが、マーカーが至近距離にいる状態でスローワーがディスクを地面に当ててプレイを再開しているケースなど、誤った方法でチェックからプレイを再開している場面が多く見受けられました。
10.5.1. スローワーがディスクを所有している場合:
10.5.1.1. ディフェンス側の選手が手の届く範囲にいる場合、その選手はディスクに触れなければならない。
10.5.1.2. ディフェンス側の選手が手の届く範囲にいない場合、スローワーはディスクを地面に当て、「ディスク・イン」とコールをしなければならならない。10.5.2. ディスクが地面にある場合、最もディスクに近いディフェンス側の選手が「ディスク・イン」とコールをしなければならない。
まとめ
今回の大会では、スピリット・キャプテンの活躍が目立ったと感じています。今後、スピリット・キャプテンを中心にチームのSOTGについて考えるチームが増えていくことが期待されます。
その一方でルールの誤認も目立ちました。公式ルールを読むだけでは想像しづらいシチュエーションが多いという声も伺っておりますので、解釈が不明なルールがあれば折に触れてゲームアドバイザーにお問い合わせいただければと思います。
今後とも、ゲームアドバイザーの活動にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
Flying Disc Times ライター
JFDA上級公認ゲームアドバイザー|WFDF国際ゲームアドバイザー日本人第1号|明治大学FREE FLYERS出身|CREWS所属|フライングディスク競技の核である「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」と、その考えに沿って選手が「セルフジャッジ」を高い水準で実現するための方法について、日々研究と実践を繰り返しています。エビデンスに基づいた記事の執筆を心掛けます。