「楽しんで勝つ」吉見怜選手(2019AOUGC 日本代表ミックス部門キャプテン)

2019年7月23日(火)〜27日(土)に中華人民共和国・上海で「WFDF2019アジア・オセアニアアルティメット&ガッツ選手権大会(以下、「AOUGC」)」が開催される。4年に1度開催されているこの大会は、世界アルティメット&ガッツ選手権大会(以下、「WUGC」)の前年開催となっており、日本代表チームの現在地を確かめる重要な大会だ。今大会、日本からはアルティメット3部門(メン部門・ウィメン部門・ミックス部門)とガッツ1部門(オープン部門)の出場が発表された(代表メンバーはこちら)。今回は、アルティメット・ミックス部門にキャプテンとして出場する吉見怜選手に話を伺った。

吉見選手と私は同学年。これまで同じチームでプレーした経験こそないものの、2015年には共に23歳以下日本代表としてロンドンでの世界大会に出場した(別部門)。今回は私と同学年でありながら、A代表のキャプテンとしてAOUGCに挑む吉見選手に想いを聞かせていただいた。

 

【他部門キャプテンへの取材記事はこちら↓】

Profile

WFDF2019 アジア・オセアニアアルティメット&ガッツ選手権大会
日本代表 ミックス部門 キャプテン

吉見 怜
Ren Yoshimi

1994年6月30日生まれ
びわこ成蹊スポーツ大学アルティメット部出身
大阪スピリッツ(メン部門)所属
右利き。ポジションはハンドラー

2015年に23歳以下ミックス部門で日本代表として世界大会に出場。

 

2015年 23歳以下世界大会

2015年、23歳以下世界大会での吉見選手。

Interview

「しっかり勝って、大会でメダルを取りたい」

―インタビューの時間作ってくれてありがとう。よろしく!
こちらこそありがとう。よろしく。

 

―さっそく本題に入らせてもらうね。今回日本代表のキャプテンとして国際大会に出場することになると思うけど、どういう風に感じてる?
実は、学生時代も社会人チームでも、今までにキャプテンをした経験がないから分からないことだらけ。監督からキャプテンをお願いしていただいた時にも、「分からんことだらけですけど、それでもいいですか?」って確認した上でやらせてもらってるくらい。でも、やるからにはしっかり勝って、大会でメダルを取りたいな。

 

―なるほど。キャプテンをするにあたって何か心がけてることはある?
キャプテンとして特別意識していることはなくて、変に気負うことなくやってるつもり。ただ、合宿とかでみんなに伝えていることとして「楽しむこと」があるかな。他のメジャースポーツと違って、自分らはお金をもらってプレーしているわけじゃなくて、わざわざ休日をアルティメットに費やしている。じゃあ、それでもなぜアルティメットをやるかっていうと、楽しいから。やらされているわけじゃなくて、楽しいからやってるってことが意識できなくならないように、代表の練習でも言葉にしてるかな。

これは学生の頃からずっと考えてることで。自分がアルティメットを始めたばかりの時に、先輩たちもそう考えてた。先輩らが楽しさを優先していた土台があって、そこに自分らの学年では「楽しんで勝つ」ってのを意識してやってた。これが今に繋がってると思う。

 

―なるほど。学生時代の経験がかなり土台になっているように感じたんだけど、アルティメット始めたきっかけや学生時代について教えてもらってもいい?
うん。アルティメット始めたのは大学から。中学、高校と野球やってたけど、実は中学の時に本当はバレーボールをやりたくて。でも中学校にバレーボールがなかったから野球部に入った。高校にはバレーボール部があったけど、その時は競技を変えようとは思わなくて野球を続けて。それで、大学ではどうしようかって考えた時に、バレーボールやりたかったことを思い出して、ビーチバレー同好会くらいなら経験がない自分でもいけるかなって思って。

でも、いざ大学に入ってビーチバレーの勧誘ブースに行ったら人がいなくて、そのタイミングで一緒に大学入った友達が「アルティメット部あるやん。どう?」って。その時誘われるまで「アルティメット」の存在知らなかったけど、行ってみたら先輩たちに「芝生でフリスビー投げてみいや」って言われて、それで投げてみたら面白くて、しかも「日本代表になれるチャンスあるよ」っていう言葉も聞いて。それでアルティメットやってみようって思ったかな。

 

―ってことは、もしビーチバレー同好会の勧誘ブースに人がちゃんといたら、、、
ビーチバレーやってた可能性大やな(笑)。

 

―ちなみに、アルティメットを始めた当初のポジションは?
始めた時から今までずっとハンドラー。大学1年生の時に、当時4年生の先輩に自分と同じような背格好のハンドラーの先輩がいて、「お前も一緒にやれよ」って感じで言ってもらって、最初は自分もあんまりよくわかってないから、「はい、わかりました」みたいな感覚で始めたのがきっかけかな。

 

―アルティメット始めてすぐの頃って、みんな上手く投げられないし、点を取るのが楽しいし、ミドルをやりがちだと思うけど、ミドルやりたいって気持ちはなかった?
全くなかったな。でも実は今でも、ハンドラーの位置から上がってシュートを受けるプレーとかは好き。ハンドラーやからってハンドリングするようなタイプではなくて、攻撃的にプレーする方やと思う。タイプ的には比較的身長が高い方やから、日本ではあまり多くない高身長ハンドラーやと思ってて、背が高くない選手とのマッチアップになってミスマッチを活かせる場面も多いから。

 

「一番の思い出は大学選手権優勝」

―大学から始めたアルティメットで、今や日本代表のキャプテンにまでなったわけだけど、これまでのアルティメット人生で一番の思い出はなに?
これまで一番の思い出は大学選手権優勝かな。自分たちが4年生になるまで、実は大学選手権では本戦にすら行ったことがなかった中で、自分が4年生になって優勝できたから。

当時、大会前の気持ちとしては、もちろん優勝を目標にしてたけど、正直大会前は優勝できるとはそこまで思ってなかった。でも、関西予選を通過して本戦に出場できて、本戦での近畿大学戦での勝利をきっかけに、チームがかなり流れに乗れたと思う。あの大会、本戦の初日の午後、豪雨で中断して、翌日に中断部分から再開するっていうイレギュラーな形になったやん?

 

―うん、覚えてる。かなりひどい雨が降り始めて一時中断した後、結局止まなかったよね。
そう。その試合が近畿大学戦で、中断前に試合中盤で、点差があまり開いていない接戦の場面だった。結局、その日中には再開にならずに、翌日中断時点から再開することになった。近畿大学はあの年優勝候補の1つだったし、関西予選では一度負けてしまった。そんな相手に対してせっかくの接戦っていう悪くない場面で中断になって、しかも翌日途中から再開しなきゃいけないっていう難しい状況で、正直あんまり良くない流れだと思った。でも結局、その試合を勝ち切ったのが大きかったかな。

そこからは、決勝戦も含めて、チームとしてかなりいい流れで優勝までいけたと思う。

2016年 大学選手権優勝

2016年、吉見選手を擁するびわこ成蹊スポーツ大学アルティメット部は大学選手権初優勝を果たした。

 

―それじゃあ、逆に辛かった思い出とかはある?
2015年の世界大会かな。23歳以下とはいえ、目標としていた日本代表になることができて、世界大会にも出場できたけど、大会では試合にワンポイント出れるかどうかって感じで。満足のいく出場機会を掴み取ることはできずに、先輩たちについていくような感じやった。でも今思えば、あの時の悔しい想いは、次のステップに進むためやったかなって思うかな。

実際その数年後に、US Openにミックス部門で出場する機会があって、当時の代表メンバーの人たちが中心のチームで参加したんやけど、その時にディフェンスで出場機会が多くて、自分が得意だと思ってるディフェンスで、気負わず楽な気持ちでプレーできた。しかも大会中に、マンオブザマッチに何度か選んでもらえて、「自分も海外である程度通用するくらいに成長してきてるかも」って思えたのは自信になったかな。

 

「ストレス、難しさがミックスにしかない面白さ」

―今回、日本代表のキャプテンになったわけだけど、始めた時から「日本代表」ってのは意識してた?
そうやな。アルティメット始める時に「日本代表になれるチャンスがある」って言葉を聞いて、それがアルティメットを始める一つのきっかけになったし、自分が大学1年生やった当時、大学4年生やった先輩にも日本代表選考を経験してる人もいた。だから始めたタイミングから、いずれどこかのタイミングで日本代表挑戦しようっていうのは考えてたな。

それで、大学1年生の冬には地区選抜の選考が始まったから参加した。ミックス部門で選んでもらったけど、当時はメンorウィメン部門でダメやった人がミックスに行くって感じ。正直、俺は最初それが理由でミックス部門になった。当時はミックスしか自分には選択肢がなかったって感じ。でも今は俄然ミックスが面白いって感じてる。

 

―クラブチームではメン部門でやってると思うけど、メンとミックスを比較して、ミックスの面白さってどんなところだって感じる?
やっぱり「難しさ」かな。メン部門であれば性別の差がないけど、ミックス部門はどうしても男女でのスピード感の違いが生まれちゃう。その微妙な違いがミスに繋がったりするから、そういうストレス、難しさがミックスにしかない面白さやって感じるかな。

 

―なるほど。ミックスならではの難しさがある中で、今回の代表チームのここまでの出来についてはどう感じてる?
大会に向けてチームとしてはまとまってきたと思う。ただ、勝ち切るための「自信」と「鉄板プレー」を見つけ切れてはいないかなって思う。この部分を大会までの残りの合宿でどこまで仕上げられるかが勝負やと思うかな。

 

―自分自身のプレーに対しての満足度はどう?
自分のプレーには満足いってるかな。今回のチームでは、今のところオフェンスで出ることがメインやけど、正直自分はオフェンスに自信があるタイプじゃない。でも、ある程度自分の良さである攻撃的なプレーが出せてると思うから。だから、ここからは大会に向けてチームとしての自信とか鉄板プレーをしっかり見つけられるように準備したい。

それから、今大会でキャプテンをやらせてもらうからといって、来年の世界大会でのポジションが約束されているわけではないと思ってて、来年の世界大会のメンバーに入ることを目標にやってるけど、今大会のメンバー以外の選手も含めて、これから先、ポジション争いがあると思う。だから、今回のAOUGCが来年の世界大会に繋がるようにしたいと思うかな。まずは、今大会では、前回のAOUGCでのミックス部門銅メダルを超える結果をしっかり残したいと思う。

 

―なるほど。ありがとう!大会での結果期待してる!
こちらこそありがとう。楽しむこと忘れずに頑張るわ。

 

 

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2019年 AOUGC アルティメット ミックス部門日本代表

2019年 AOUGC アルティメット ミックス部門日本代表 合宿での一枚。

 

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