U24日本代表ミックス部門キャプテン 中野源一が語る 日本代表への道と世界大会の魅力とは vol.2
Profile
WFDF2018世界U-24アルティメット選手権大会 ミックス部門 キャプテン
中野 源一
Genichi Nakano
1994年12月22日生まれ(当時23歳)
慶應義塾大学ホワイトホーンズ出身
Technicolor(メン部門)、UNKNOWN(ミックス部門)所属
背番号#23
左利き。ポジションはミドル
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Interview
日本代表を目指して大学からアルティメットに挑戦。
―アルティメットを始めたきっかけは何ですか?
最初のきっかけは、高3の夏にたまたま見たテレビ番組でした。競り合いなどの動画を見て初めてアルティメットという競技があることを知りました。実際にアルティメットを始めたのは大学に入学してからで、大学にアルティメットサークルがあることを知り、新歓に行ってみたら日本代表の先輩がいて、大学から始めて日本代表を目指せるよっていう話を聞いて、よしやってみようって思いました。
―高校では何をしていましたか?
高校までずっとサッカー部でした。大学の付属校だったので、大学のサッカー部のレベル感もある程度分かっていて、高校時代にはベンチにも入れなかった自分がこのまま大学の体育会でサッカーを続けても正直先が見えているなと感じていました。かといってサークルでやるのも違うなと思ったんです。高校まで10年間サッカーを真剣にやってきた過去の自分に恥じないように、やるからにはちゃんと真剣に取り組みたいって気持ちがあったので、大学4年間で日本代表になるという目標を持ってアルティメットを始めることを決意しました。
代表選考での落選。経験をバネにA代表へ
―選考会を受ける時はどんな気持ちでしたか?
実は自分は世代別代表を2回受けていて、初めて挑戦した2015年には落ちているんです。
―そうなんですね。2015年の選考会の思い出を教えてください。
当時大学2年生でしたが、所属する大学チームでは新人戦で準優勝していましたし、自分も中心選手として活躍していました。そのため、正直少なからず自信はありましたし、もともと日本代表を目指して入部していたので、「ついに俺が日本代表になる時が来た!」と思って受けました。でも結果は落選で、とても悔しかったです。しかも、自分の落選だけではなくて、高校サッカーからずっと一緒にやってる同期が、同じ選考で合格したんです。自分だけ落ちたのがめちゃくちゃ悔しかったのを覚えています。
―そこから這い上がったわけですね?
そうですね。この悔しさがきっかけとなって、大学2年の3月あたりからA代表の強化合宿に申し込んで、参加するようになりました。A代表では自分が一番の若手で、自分より上手い人しかいなかったので、一から勉強してA代表になってやろうと思い、がむしゃらに走り回りました。とにかく吸収できることはなんでも吸収しようと取り組んでいました。その後、大学3年生の時にA代表として日本代表に初めて選ばれました。ただ、ロンドンでの世界大会では結局6位。この時にメン部門が決勝の舞台で戦っているのを目の前で見て、自分も決勝戦の舞台に立ちたいと思ったんです。
―A代表での経験が今回のU24に何か繋がりましたか?
そうですね、それまでは「日本代表になること」が目標だったんですが、A代表として世界大会に行って、「世界一になること」が目標に変わりましたね。
―部門はなぜミックス部門にしたのですか?
最終的にワールドゲームズの代表になりたいという想いがあるんですが、ワールドゲームズはミックス部門での開催なので、ミックスを早いうちからやっていたほうが良いんじゃないかと思ったのが一番の理由です。あと、U24では2015年にメン部門が3位なのに対してミックス部門は7位でした。日本のミックスを強くしたいなと思ったこともあって、ミックス部門にしました。ミックス部門は、出場選手が男性4人の時と女性4人の時とで戦術が大きく変わってくる部分が魅力の1つだと思います。
自分にできることを考えて行動した選考会と代表合宿
―そうして受けた今回のU24の選考会はどうでしたか?
1次選考会ではわりと良いパフォーマンスが出来た感触はありました。ただ、年末に怪我をしてしまい、2次選考と最終選考はプレー出来なかったんです。このまま残りの選考会に不参加となれば、間違いなく落ちると思いました。なんとしても日本代表になるために、怪我してる自分が今出来ることって何だろう?って考えたんです。その結果、怪我をしていても選考会に参加して、外から見てる立場としてアップを盛り上げたり、今まで自分がA代表などで得た経験をミックスに慣れていない後輩にアドバイスしたりしました。選考会とはいえ、今自分ができる関わり方をすることしか出来ないなと考えて参加しました。結果的に落選したとしても、何もやらないで落ちたのと、何かやれることやって落ちたのだと気持ちも違うなって思っていました。
―そんな中で日本代表に決定したときはどんな気持ちでしたか?
合格のメールを見た時は、「よしきた!」って思いましたね。受かった理由を自分なりに考えると、A代表までミックスでやってきた経験と、選考会で自分がやってきた行動を評価してもらえたのかなと思います。
―キャプテンに決まったのはいつですか?
5月くらいの強化合宿でキャプテンを決めるミーティングがあって、そこで立候補したのがきっかけでキャプテンに選ばれました。
―キャプテンとして国内合宿で意識していたことは何ですか?
優勝を目指すために関わっていこうという気持ちがありました。世界一になれるチームを作っていくなかで、何が大事なのか考えたときに、キャプテンとして自分がやることは、チームのモチベーションコントロールと世界一のリアリティを伝えることだと思ったんです。チームのモチベーションをコントロールした上で、全員がちゃんと世界一になりたいって明確に思っている状態で世界大会に臨めるようにどう声掛けしていくかが重要だと思っていました。具体的には、自分がA代表の時にした失敗を後輩にさせないように、日本代表に受かって満足しているところからスイッチを切り替えさせたり、自分たちが世界的に見てまだまだチャレンジャーであることを言い続けたりしていました。
―社会人としての代表活動は大変でしたか?
正直、仕事との両立はなかなかしんどい部分もありました。でも会社の人たちにも「日本代表ってすごいね!」とか「頑張ってね!」と応援していただいていたので、これだけ応援していただいているからこそ「しっかりと結果残して帰ってこなきゃな。」と思うようになりました。チームの中では、キャプテンでもあり最年長でもあったので、社会人だから動けなくなっているとは思われないように、誰よりも動ける選手でいよう、背中で引っ張れる選手でいよう、と思っていました。
アメリカに負けて痛感したのは「背負っているものの差」
―最も印象に残っているのは試合は何ですか?
予選リーグでのカナダ戦です。前半終わったタイミングで4-8で、そこから9-13でまでいってしまったんですね。決勝点が14点だったので、あと1点取られたら終わりという状況でした。ただその時の自分は、一番負けてるはずなのになんとなくチームの雰囲気から誰も負けると思ってなさそうって感じたんです。だから1点ずつ積みあがっていって最終的には5連続得点して勝つことが出来ました。今振り返ってみると、この試合で一番活躍したのが自分の代=社会人1年目の代だったように思います。みんな優勝しようという想いを持ってきたなかで、過去を経験している人たちがなんらかの形で過去の負けがフラッシュバックして、「いやいや絶対優勝するんだ!」っていう気持ちで試合に入った結果そうなったのかなって思います。ここでカナダに勝てたことで、チームとしても勢いに乗ったきっかけになりました。
あとは、シンガポール戦も印象に残っています。試合前に両チーム整列して、お互いに国歌を歌ったんです。この時に初めて、「国を背負ってる」って実感しました。
―キャプテンとして世界大会を振り返ってみてどうでしたか?
ざっくり言うと良かったです。でも結果は負けた、アメリカには勝てなかった、一番はそこですね。ただアメリカと実際に戦ってみて、勝てない相手だとは全く感じませんでした。能力的には劣っている部分もあったけど、それがそのままスコアの差につながっているわけではなくて、自分たちで点を取れるときは取れるし、守れるときは守れる。いろいろトータルして拮抗していた中で、何が違ったのかなって考えると、アメリカが王者として背負っているものと日本がチャレンジャーとして背負っているものの差だったのかなと思います。この部分がこれからアメリカに勝つために自分が考えていかなければいけない課題になると思っています。
これからU24を目指す後輩たちへ
―これからU24日本代表を目指す後輩におすすめできますか?
絶対に受けてほしいです!
―受けようか迷っている後輩にアドバイスはありますか?
迷っているっていうことは、なりたいという気持ちが0じゃないということだと思うんですよね。行かなかったら後悔すると思います。やってみて落ちたら落ちたでいいし、受かったら俺頑張ったなって思えばいいし、でもそれってやってみた人じゃないと分からないことだと思うんです。自分なんかが行っていいのかなっていうのは周りからの目を気にしているだけで、そんなのは小さなプライドでしかないと思います。自分のありたい姿って何だろう?っていうのをシンプルに考えること、自分がどうありたいんだろうっていう気持ちに率直に向き合うこと。これが大事だと思います。挑戦することを恥ずかしいと思ってほしくないですね。
―社会人で仕事と両立できるか不安な後輩にアドバイスはありますか?
できるかできないかじゃなくて、やりたいと思った気持ちを大事にしてほしいです。仕事と両立できるかな、世界大会に行けるかな、なんて話は今考えたところで何の意味もないと思います。まずは日本代表になることが出来てから、どうすれば両立できるかを考えましょう。思っているよりなんとかなります。(笑)
―ありがとうございました!
ありがとうございました!
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Flying Disc Times ライター
JUNTPユース普及育成プロジェクト統括|上智大学FREAKS出身|TechnicolorおよびOdds and ends所属|元U19,U24アルティメット日本代表|#28
2018年のU24ではメン部門のキャプテンをしていました。個人種目ではMTAとアキュラシーで年代別の世界記録を持っています。アルティメットにはプレーヤー、指導者、実況・解説、GA、運営スタッフ、と様々な立場から関わっています。特に最近ではユース世代の普及や育成に関わらせて頂いています。どうぞよろしくお願いいたします。