第一回三鷹ナイト 集合写真

ナイトアルティメットから世界大会へ。一人の大学生が、地域で出来る小さな貢献

“0番の人が教えてくれて、すごい楽しかった”
前回参加したときに息子がそう言っていたと、三鷹ナイトに来てくれた小学生のお母さんが僕に話してくれたのだ。そのときは情けなく笑うことしかできなかったが、なんと嬉しい話だろうか。0番とは何を隠そう、僕のことだ。

アルティメットには夜がある。ナイトアルティメットと呼ばれるそのイベントは、SNSなどで周知され、ふらっと集まった人たちが世代も男女も混合で練習や試合などを楽しむ。現在では日本各地いろんなところで行われているようだ。

当時、大学生だった僕は、主催者の一人として三鷹ナイトを立ち上げたとき、無所属のアルティメッターだった。大学入学直後こそ、大学チームに所属し、今でもお世話になっている素敵な先輩たちに基礎を教わったのだが、新人戦にも出場することなく1年足らずでチームを抜けてから、大学を卒業して今のチームに拾われるまでは「フリーアルティメッター」を名乗った。チームをやめても、こんな面白いスポーツはやめないと決めていた僕は、ナイトアルティメットを渡り歩いたわけだ。

「つぶやき」がきっかけ。三鷹ナイト設立。

大学に重たい荷物をもっていき、授業を早めに抜け、そして安くない交通費をかけて各地へ赴かなくても、「自分の家の近くでアルティメットができたら最高じゃないか」というのが当時の僕の考えたことだ。そんな僕の「つぶやき」は現実のものになった。ドッジビークラブのコーチをしていた岩合さんが、「クラブに所属する子供たちにアルティメットを体験させてあげたい」と先頭に立って動いてくれたのだ。先述のように、僕は「自分の家の近くでアルティメットができたら最高じゃないか」というなんとも自分勝手な理由しかなかったのだが、話が進むのならばと後ろからくっついていった。三鷹ナイトは今年で6年目になる。

 

第一回三鷹ナイト 集合写真

初開催時は予想をはるかに上回る大盛況だった。

 

経験者と初心者が入り混じって、この場を楽しんでくれている。

経験者と初心者が入り混じって、この場を楽しんでくれている。

設立時の少年が世界大会を経験

そんな経緯もあって、最初に常連となってくれたのは、岩合さんが教えるドッジビークラブの子供たちだ。その中の一人は高校生になった。今もGONAアルティメットクラブに所属し、アルティメットを愛してくれていている。驚くなかれ、先日行われた20歳以下の世界大会に日本代表として出場した。試合を見て、“三鷹ナイトから”日本代表が出たと勝手に喜んでいたのだが、三鷹ナイトがなければ彼はどうなっていただろうかと、自惚れに近いことを思う。

ほとんどの選手が大学で初めてディスクに触れるというのがこの競技の現状だ。彼のように中高生からアルティメットを始めたい、やってみたい、という選手はどうしたらよいのか。冒頭で紹介した少年は、体育でアルティメットを体験し、すっかり魅了されてしまったようなのだが、「一体この競技はどこで出来るの?」という質問に先生は答えられなかったのだという。調べていく中で東京都福生市で活動するGONAアルティメットクラブのことを知ったが、少年のお母さんは週に何回も福生まで通うのは難しいと言っていた。

急がれるユースのプレー環境整備。今こそナイトアルティメット

最近では、大学生のデビュー戦であった新人戦が、U21アルティメット選手権大会と名前を変え、いわゆるユース世代の日本一を決める大会となった。そういった動きが加速していくのだから、きっと少年のような“悩めるアルティメッターの卵”はこれから増えていくはずだ。そのために、GONAのようなユースのチームがもっともっと、全国各地に必要になるわけだが、まだまだ理想にはほど遠い。
だから今は、三鷹に来てほしい。所属チームが誕生するまで、その環境が整うまで、その受け皿としてナイトアルティメットがあればいい。最近はそう思うようになった。ナイトにはいろんな目的をもった人が集まる。久しぶりに体を動かしたいベテラン選手、大会前の調整にくる一流社会人選手、さらなるスキルアップを目指す学生選手、友達に連れてこられた初心者。その中に、競技の入り口としてこの場を選んだ人間がいたってだれも拒まないだろう。

 

プレー風景

世代問わず、男女問わず、経験問わず、様々な人が様々な目的でアルティメットを楽しむ。

 

僕自身、ナイトで育った。そこで、趣味というだけでなく“選手”を名乗れるくらいの技術は身につけたつもりだ。もし身近に、「アルティメットをやってみたい」「あれって誰でもできるの?」「うちの子供にやらせたい」。そんなことを言っている人がいたら、近くで開催しているナイトアルティメットを紹介してみてほしい。素敵なスピリットをもった紳士たちが、きっとこの世界に惹きこんでくれるだろう。

いまでは自分の活動の場としてだけではなく、ささやかではあるが第二の目的をもって三鷹ナイトを運営している。三鷹ナイトで一人の少年がこのスポーツの魅力に気付いてくれた。そして毎回足を運んでくれることが嬉しい。彼もまた、日本代表に選ばれるような選手に成長してくれるだろうか。そしてそのときは、0番のユニフォームを着てくれるだろうか。

三鷹ナイトは小中学生の参加も多い。彼らの今後が楽しみで仕方がない。

三鷹ナイトは小中学生の参加も多い。彼らの今後が楽しみで仕方がない。

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