【海外日本人選手対談 vol.3】仙田凌&村岡彰文 「AUDLルーキーシーズン終了」

8月10,11日、アメリカ カリフォルニア州サンノゼのFoothill Collegeにて行われたChampionship Weekendをもって、北米プロアルティメットリーグAUDLの2019年シーズンが終了しました。各地区プレーオフを勝ち抜いたNew York Empire(東地区)、San Diego Growlers(西地区)、Dallas Roughnecks(南地区)、Indianapolis AllayCats(中西地区)の4チームで行われたChampionship Weekendは、決勝でダラスとの接戦をものにしたNew York Empireがチーム創設初の優勝を果たしました。ニューヨークはこれで今シーズンの戦績を15勝無敗とし、2013年のToronto Rush、2016年のDallas Roughnecksに続く史上3チーム目の無敗優勝となりました。

私、仙田凌が今シーズン所属したSan Diego Growlersは、準決勝でDallasに18-23で敗れ村岡彰文選手のToronto Rushは、7月21日の東地区プレーオフでNew Yorkに16-19で敗れ、それぞれシーズン終了となってしまいました。

今回は、AUDL2019シーズン終了を受け、海外日本人選手対談企画の第3弾として、私と村岡選手のAUDLシーズンを振り返りを中心に記事をお届けします。

 

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「試合を変えられるプレーヤー」が、北米の強いチームにはいる

−仙田−

AUDLでのシーズン、お互いにお疲れ様。NY、強かったね。仙田自身はNYと直接対戦があったわけではないから、実際に肌で強さを感じることができなかったけど、準決勝で自分たちが圧倒されてしまったDallasが、決勝ではNYに完敗していて、NYとの差は大きいなって感じたんだけど、実際に試合をした村岡はどう感じた?

 

−村岡−

確かに強かったね。特にシーズン後半はNYをいかに倒すかしか考えていなかったけど、それでも勝てなかった。プレーオフでの試合も結局は勝ちきれなかったしね。

 

−仙田−

東地区のプレーオフ決勝でNYと試合をした時には、チームとして、もしくは個人としてどんなことを意識して試合に臨んだ?

 

−村岡−

楽しくやることかな。実はそれ以外あんま覚えてない(笑)。強いていうなら、「普段練習でやっていること、普段練習でできていることをやる」ってことを意識してたかな。あとは、チームメイトのことを信じてプレーすること。

自分はオフェンスセットだったから、練習ではセットプレーの練習が多かったんだけど、その決められたプレーをいかにこなすかが求められてたと思う。ただ、NYとの試合では、その決まったプレーができなくなることが多かった。やっぱりNYはRushが何回もやっているプレーを止めに来ていたんだと思う。逆にRushは、決まったプレーが止められて。決めていたプレーができなくなった時には、みんな困って、でたらめに走り回ってしまって、パスの出しどころに困ったところをNYにカットされた印象かな。「もうここしかない」ってタイミングを逃さずにきっちりとカットしてくるのはNYの強さだったと思う。

 

Toronto Rush 村岡選手

Toronto Rushのオフェンス中心メンバーとして東地区プレーオフ決勝に進出した村岡選手。しかし、NYに力及ばなかった。

 

−仙田−

なるほどね。確かに、自分自身もDallasとNYの決勝戦をスタンドから観ていて、前半の1点を争う攻防を戦った後に、後半ここぞでブレークを1つ1つ積み重ねて差を広げていくところにNYの強さを感じたな。準決勝でSan Diegoが勝てなかったDallasや、優勝したNYを観て感じたことは、勝ち上がっていくチームには、速さ・強さ・巧さみたいな基本的な能力を持っていることは前提として、その上で「試合を変えるプレー」が多かったと思うし、「試合を変えられるプレーヤー」が確実に存在していたなって感じた。決定的な場面で長い距離のハンマーやスクーバを通すスロー力、ド派手なダイブや競合いでディスクを落としたり死守したりする勝負強さ。こういう「試合を変えられるプレーヤー」が、北米の強いチームにはいる印象。

 

−村岡−

確かにそれはあるかもしれない。

 

2019 AUDL 準決勝 San Diego Growlers

準決勝まで駒を進めたSan Diego Growlersだったが、Dallasに完敗。試合を変えるビッグプレーが勝ち上がったチームとの差だった。

同じアルティメットでも、日本と北米では違うスポーツ

−仙田−

AUDLで1シーズンプレーしてみて、特に印象に残っていることや感じたことは何かある?

 

−村岡−

やっぱり、AUDLだけじゃないけど、北米のアルティメットは「スポーツ」だって考え方があることかな。バスケとかもそうだけど、アルティメットやバスケは本来接触はダメだけど、実際にはぶつかるし、選手同士も当たるつもりでいる。体で止めてくるし、それがあるから、北米のプレーヤーは日常的に鍛えてもいる。でも、そこでファールって言うのが日本で、そこで勝負するのが北米だなって感じた。ルールだから、別にファールって言うことが「逃げ」ではないけど、単純に違うな、同じアルティメットでも、日本と北米では違うスポーツだなって感じているかな。仙田は?

 

−仙田−

確かに接触の部分は大きな違いだね。それは俺も感じた。あとは「ビジネス」的な要素を強く感じたかな。実際に現地でプレーヤーとして「プロ」アルティメットに関わることができたけど、実際には自分も含めて、選手たちや指導者、オーナー陣はアルティメットで生計を立てているわけではないことがわかった。この点でいうとまだまだ発展途上なんだと思う。でも、アルティメットでお金を生み出すために、リーグの首脳陣がスポンサーを集めたり、各チームが地元で積極的に活動したりと、AUDLがあることで「アルティメットを発展させよう!」という機運を高められている気がした。選手として活動していることもすごく誇らしく感じたしね。

あとは、セルフジャッジではないことやフィールドサイズが大きいこと、ブザービートが認められていることなどが通常のアルティメットと違うから、単純にプレーヤーが様々なシチュエーションを経験できて、それが選手のレベルアップに繋がっているんじゃないかなと思った。日本だと練習内容が一辺倒だったり、試合もいつも同じ形式で行われているけど、北米のトッププレーヤーたちはありとあらゆるシチュエーションでプレーすることが求められる。時には残り1秒でゴールを狙うこともあれば、試合時間5分くらいで勝っているのならパスを回して時間を稼ぐことが求められることもある。状況に応じて選択すべきプレーを変えなきゃいけなかったり、その状況下で結果を求められたりという点では、一選手としてかなり学ぶ部分が多かったなって思うかな。

 

−村岡−

なるほどね。そのほかに気づいたこととかあった?

 

−仙田−

単純な文化の違いの部分と、アルティメットというスポーツ自体の幅広さや深さの違いかな。文化の違いで言えば、普段うちのチームがホームゲームで使っていたのは地元の高校のグラウンドだったんだけど、そこにスタンドがあるし、試合の時にはビールとかピザが売られていたんだよね。日本だったらまず高校のグランドが人工芝でスタンドがついているだけでも珍しいし、高校で行う試合でアルコールを売るなんてかなりご法度な感じがするから、単純に全然違うなって。あとは試合の途中でも、スタジアムで流れている音楽に乗って選手たちが踊りだしたりしちゃうんだけど、日本だったら「真面目にやれ!」って怒られかねない(笑)。

スポーツ自体の幅広さや深さって点では、アメリカはオフェンスのバリエーションが多いし、ディフェンスも早いタイミングでどんどん色々試すけど、日本はそれに比べるとまだまだオフェンスのバリエーションが少なくて一辺倒な印象があるかな。それに、AUDLは試合が長くて、入る点数も多いから、長い時間の中で流れが変わるからどこで何を仕掛けるのかをコーチ陣は考えているし、選手もそれを考えてプレーしないといけないから、戦術的な面でもいろいろなことが試されていくし、どんどん深まっていく気がしている。

 

−村岡−

確かに、特にAUDLではコートが通常に比べて大きいからスイングが長くなったり、それに応じてミドルの走る距離も変わってきたりする。だから、すごく走らなきゃいけない。でも、普通のアルティメットは休めるし、スペースがない分、あえて休む時間を作る必要があったりするね。そういう違いがあるからこそ北米の選手たちは考えるし、スポーツとして深まっていくのかもしれないね。

 

San Diego Growlers 仙田

シーズンを通してプレーして感じたのは、リーグの「ビジネス的要素」とスポーツとしての「奥深さ」。

北米選手権で結果を残したい

−仙田−

AUDLシーズンを終えて、仙田は日本に帰国したけど、村岡はまだカナダに滞在しているよね。直近の目標は何かある?

 

−村岡−

トロントのGOATというチームで10月の北米選手権に出場することができるから、北米選手権で結果を残したい。実は夏にGOATとして出場した大会でPoNYと試合をして勝ったんだよね。PoNYはAUDLのNYに所属する選手たちが中心のクラブチームなんだけど、カナダに来てから嬉しかった出来事の一つかな。北米選手権でも当たる可能性があるから、その時も勝てるように頑張りたい。仙田は?

 

−仙田−

俺は直近でいうと10月のチャンピオンズリーグかな。信州ルーツで出場させてもらう予定なんだけど、ダブルスターで優勝したい。個人的には怪我で満足にプレーできなこともあった1年だったから、怪我なく満足のいくプレーをしたいな。俺は北米でのクラブのシーズンには残念ながら参加できないので、勝手ながら北米選手権での村岡の大暴れ期待してます!!

 

−村岡−

任せろ。

GOAT

村岡選手が所属するクラブチームGOATはカナダでの予選を突破し、北米選手権本戦への出場権を獲得した。

 

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